めんおうブログ

国家公務員からラーメンベンチャーへ転職した、30代男性の経験と思いと挑戦。時々、本などのブログ

ラーメン店の「朝の仕込み」を任された。もう慣れたこの作業が大好きだ。

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前書き

先日から朝の仕込みを任されるようになったので、これをしながら感じたことについて記録しておきたい。

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感じたこと

わたしは、先日から「朝の仕込み」作業を任されるようになったが、この仕事が大好きだ。一般人めんおうとして朝一番に店に入り、まだ眠っている店を起こしながら、自分も、めんおうから店の一部になっていくような感覚がたまらないのである。

 

 

 

毎朝一番早く店に入るのはわたしである。ジーンズにスニーカーというようなラフな服装で出勤し、店の自動ドアのカギをあけて入店する。店内はまだ暗く、ラーメン店独特の脂っぽく、こってりとした空気があり、店はまだ寝ているな、と感じる。日をまたぎ、深夜(というか早朝?)まで動いていたのだから仕方ない、と思いながら店の空気を体いっぱいに吸い込むと、めんおうから店員として店の一部になる準備が整う。ガス点検機をスタートさせ、階段を駆け上がり、更衣室で店のユニフォームに着替え、鏡で服装を確認し、顔をくしゃくしゃにした後、笑顔をチェックする。今日も一日やるぞ、と思いながら、今度は階段を駆け下り、ガス点検の異状なしを確認し、厨房のみ電気をつけ、少し明るくなった店内を厨房まで速足で向かう。厨房の入り口で「おはようございます、本日も一日よろしくお願いします!」と挨拶する(気合を入れる)。厨房のみに電気がついただけのまだ暗い店内で、一人気合を入れ、しんとした店内にわたしの声が響くのを聞くと、わたしの体温が店に伝わるような気がする。めんおうではなく、もう店の一部になっているのを感じる。店は、わたしを感じてむにゃむにゃ何やら言いながら寝返りを打つ。毎朝決まった時間、まだ暗い店内の厨房で一人の男がバタバタとせわしく動き始める。まだ眠っている店を起こす「朝の仕込み」の始まりである。

 

 

 

朝の仕込みは、スープ作り、湯沸かし、米炊き、野菜の水切り、野菜切り、チャーシュー作り、発注品受領などのたくさんの作業がある。開店前までにそれぞれの目途をつけるためには、時間のかかる順番に取り掛かり、複数の作業を同時並行的に進めなければならない。朝の仕込みを任された当初は、どの作業にどのくらいの時間がかかるかがわからず、また、同時並行的に作業する、という着意もなかったので時間内に作業が終わらなかったが、今ではわたし一人に任されるようになった。店長の出勤も遅くなり、少しは店長の休む時間の確保に貢献できているようでうれしい。

 

複数の作業をどのような順序で進めるかは、毎朝の経験からの学びと通勤電車の中でイメージアップした通りである。だから、あとはそのイメージとおり体を動かすだけだ。頭を使う作業ではない。もう店の一部なのだからこれでいい。

 

一番時間がかかる作業はスープ作りなので、これから取り掛かる。3つの寸胴に熱い湯を注ぎつつ、コンロに火をつけた後、暗い銀色のいかにも冷たそうな冷蔵庫から、大きなボールに冷たく白く固まった豚の背脂を取り出し、湯につけて戻す作業と凍っている背脂を溶かす作業をそれぞれの寸胴で同時に進める。それが終わったら、タレと湯煎した背脂を混ぜる作業と溶かした背脂を計量して冷蔵庫に戻す作業を進めつつ、煮卵をつける作業、野菜の水切り、米炊き準備を同時に進める。冷たい水が、荒れた手にしみるが、店の一部になったわたしにとっては、それすら心地よく感じる。

 

これに目途が付くのは10時ごろだ。開店まであと1時間。この時間帯になると、配送業者が来て、発注品受領が始まる。もちろんこれも同時並行作業の一部である。10時からバイトが一人来てお冷や漬物出しなどのホール作業を始め、また、店の2階で作業する商品開発担当者も出勤してくる。わたしは、店が眠たい目をこすりながら、のそっと重たい体を起こし、あくびをしながら伸びをしているのを感じながら、仕込みの最後の仕上げに取り掛かる。

 

炊飯釜とゆで麺器の火をつけ、途中まで進めた野菜切り、注文品受領と冷蔵庫への搬入を進める。野菜を切っては途中で来る業者に対応する、切っては対応する、の繰り返しである。いかに早く切り上げられるかが勝負である。発注品は、肉、野菜、調味料、たまご、麺、ドリンクなど、いくつもの段ボールが何度にも分かれて届く。すべて届いた頃には、店の冷蔵庫周りは段ボールでいっぱいになるが、これを片っ端から片づけていく。カッターで段ボールを開き、冷蔵庫、冷凍庫にしまっていくだけの作業ではあるが、量が量で、一人でやるには意外に時間がかかる。時計を見つつ、次に何をどこにしまうかを考えながら作業を進める。ラーメン店に勤め始めてからは、カッターの扱いもうまくなり、よく切れる角度も承知済みだ。段ボールを開き、中身を冷蔵庫に搬入し、段ボールをつぶす作業はサクッとこなせるようになった。サクサク作業して、終わるころには10時45分になる。このころには、厨房は炊き上がった米の甘く、温かい、どこか懐かしさを感じる香りにつつまれ、また、コンロや炊飯釜、ゆで麺器につけた火で厨房が温かくなっている。

 

最後の最後は、厨房のキッチン作りだ。キッチン台をフキンできれいに拭き上げた後、タレのバケツ、各種容器、台ふき、のり、レードル、調味料などを決まった位置に並べる。店長は「キッチン周りが最優先!これを一番最初にやってもいいくらい!!」と言うが、これを最初にやってしまっては、他の作業の場所確保に支障が出る。これだけはおれの思うようにやらせてください、と心の中で詫びつつ1分でキッチン作りを終わらせる。今日もなんとか間に合った、と一息つけるのは開店10分前の10時50分である。あとは店長の厨房入りを待つだけだ。

 

店長が出勤し、厨房に入る。店長も「おはようございます!本日も一日よろしくお願いします!!」と挨拶する。店と店員、という関係においては、社員とバイト、店長と店員という関係に差はなく、みな店の一部、店は店員の一部なのである。しかし、やはり店長の挨拶は迫力が違う。店長の気合ですべての歯車が一斉に動き出す。店長の「それじゃあ、開けよう!今日も一日よろしくお願いしまーす!!」の声を合図に、店入り口のブラインドを開け、自動ドアのスイッチをONにし、「仕込み中」の看板を「営業中」にひっくり返し、すでに何人か並んでいるお客様を店内に入れる。店が、そしてその一部である店員が動き始める。こうして毎日、新しい朝を店と店のみんなで迎え、忙しく、あっと言う間に過ぎる一日が始まるのである。

 

わたしは、この「朝の仕込み」が大好きである。毎日の決まりきった作業ではあるが、朝まだ眠っている店を起こし、朝一番に店の一部になっていくことを許された仕事を任されていることを誇りに思うし、店の動き出しに大きくかかわる仕事であり、失敗は許されないという緊張感が心地よいのだ。こんなに心が晴れ晴れしていることはこれまでなかった。この晴れが続いていけばいいな、と思う。